さん
編PROFILE
じん・かとーさん
北海道出身、文化服装学院ファッションデザイン科卒業と同時に<装苑賞>を受賞。1975年株式会社人(ZIN)を設立、2001年LAに直営店をオープンと同時にZIN KATOブランドを立ち上げる。2015年にマレーシアで行われた、クアラルプールファッションウィークで最優秀賞である<アジアで最も影響力のあるデザイナー賞>を受賞。
気が付けばファッションビジネスへ。
海外進出やコレクション参加も次々と僕は北海道根室市の出身で、母が洋裁学校を営んでいた関係で、服作りの道具が身近にある環境で育ちました。ファッションを志す男性は少ない時代でしたが、自然にその道に足を踏み入れ、東京の学校で基礎を学んだ後、東京で自作の1点ものの服を店に持ち込むことから始めました。これがかなり売れて、自分で縫う作業が追いつかず縫製工場にお願いしたりして、気が付けばファッションビジネスに突入していた、という感じです。
時代の追い風を受け、企業は着々と拡大しましたが、デザイナーとしては立ち位置に悩む時期もありました。90年代過ぎた頃から「何か新しいことを」と考え、新ブランドでロサンゼルスに旗艦店を出したり、ニューヨークの有名な展示会“コーテリー”に出展したりと、海外での活動に注力。その後も、東京コレクション参加、父の故郷・国後島や択捉島でのファッションショー開催など、デザイナーとして多くの素晴らしい経験が続きました。僕のモットーは「来るもの拒まず・去る者追わず」「犬も歩けば棒に当たる」(笑)。流れに身を任せながらも不思議と幸運に恵まれてきたなあと。ショップチャンネルには2004年から出演させていただいていますが、それもコーテリーの会場で、偶然ショップチャンネルのバイヤーさんにお声がけいただいたのがきっかけでした。
女性にはエレガントであってほしい。
だから“ウエストがあるように見える”服を僕の作る服は、若い頃、アンティークやヴィンテージの服に感動を覚えたことがベースになっています。“手の込んだもの” “人の情熱がこもったもの”に魅かれるので、そうした“手仕事の凝った印象を再現できる服”がコンセプト。ユーズド感を出したり、手を加えたりの中に、時代の吸気をプラスしてオリジナルなものを作り上げています。そのさじ加減は、自分がデザイン画からパターンメイキング(立体の型作り)までを手がけるデザイナーゆえのこだわりかもしれません。僕は装飾多めな“足し算型”のデザイナーです。受け止めてくださるお客様もモノづくりの妙味に魅かれるタイプだと感じますし、「あらその服素敵ね、どこで買ったの?」と、服が会話の糸口になるといいなと思っています。あと、僕の服は必ずウエストをシェイプさせているのも特徴の一つ。たとえくびれに悩む方でも、服で「あるように見せる」ことが僕は得意です。くびれのラインは“エレガンス”の象徴。女性にはやはり「エレガントであってほしい」という願いがありますので。
“外に出て誰かに会うための服”。
装うことで“気持ちをあるべき方向へ”僕の持論ですが、服の印象は「着る人8割、服2割」。ファッションはその人のパーソナリティの一部で、人格や肉体性が強く影響するし、一方で服が、人の気持ちや立ち居振る舞いに影響する側面もあります。ジーンズ&Tシャツか、シルクのドレスかで、気分も行動も変わる。今、時代の流れとして“ラクな服”を求める傾向にありますが、自分の服ははっきり「ラクじゃないです」と言っています。僕のは“外に出て誰かに会うための服”。人生にはいろんなシーンがあって、大切な時には“勝負服”を着るように、装うことには“気持ちをあるべき方向に持っていく”効果があると思うのです。ショップチャンネルのお客様で、ご病気に悩む方から「先生の服を着たら、元気が出て、勇気もらって、外に出られるようになりました」とお電話をいただき胸が熱くなったことがあります。ファッションは、癒しにも、気分を高めることにもつながる。その効用をぜひ人生に生かしていただけたらと。
着て、出かけて、お友達にほめられて、うれしくなって……そんな服の魅力を存分に僕は自分でもオタク的なこだわりがあると思うし、服に使う素材なども妥協したくない。そのせいか、欲しい・欲しくないの好みがはっきり分かれる服だと思っています。そんな特徴に理解を示し、賛同してくださるファンの皆さまは本当にありがたい存在です。限られた層なのかもしれないけど、そうした方々に響く媒体としても、ショップチャンネルは本当に素晴らしいと思っています。商品開発した人が直接、微に入り細を穿ち商品を説明するので、説得力があるのは当然ですが、それは「納得したい」「口説かれたい」と思う女性の気持ちにもフィットしているのではないでしょうか。服は認識してくださる方がいなければ存在しないも同じ。より良い服を、幅広く、お値打ちにご提供できるようこれからも努めますので、皆さまはぜひ、着て、出かけて、お友達にほめられて、うれしくなって、気分が上がって……服の魅力を存分に楽しんでいただけたらうれしいですね。