山形の片田舎の工場で、世界にただ一つの糸を紡いでニットを作っています。“売れそう”なものよりも“作っていて楽しい”、“着た人の笑顔が思い浮かぶ”ものをご提供しているので、お客様と一緒にニットの世界を楽しみたいです。
山形県寒河江市にて1932年創業の紡績・ニットメーカー「佐藤繊維」の4代目取締役社長。糸づくりから製品の仕上げに至るすべての工程において「日本のものづくり」を大切にしている。羊のような金髪ヘアがトレードマーク。糸作家としても活躍中。
糸づくりへの思いが社員を動かし自分は立派な“糸オタク”に
佐藤繊維は、イタリアの糸をつくる工場の職人さんとの出会いで大きく変わりました。ニットの本場であるイタリアの工場へ見学に行った時、現地の職人さんが「世界のニットのファッションは、自分たちの紡いだ糸から始まっているんだ!」と熱く語った言葉に、とてつもない衝撃を受けたのです。かっこいい!と。
佐藤繊維の未来を切り開くために、自分たちにしかできない糸をつくりたいと夢を抱いたのもその時です。ですが、今までのやり方を変えようとすると社内からは反発が起き、特に技術者さんは冷ややかでした。それでも、ベテランの技術者さんにずっと思いを訴え続けていたら、やがてその気持ちが伝わり、一緒に新しい糸づくりをすることになったのです。廃棄された機械を日本中からかき集めて改造し、何度失敗を繰り返しても糸を作り続けていたのですが、ついに社内でストップがかかり、「やっぱりダメなのか……」と自信を失うこともありました。それでも諦めきれず、二人でひっそりと試行錯誤を重ね、理想の糸が完成するまで2年はかかりました。何度挫折しても続けてこられたのは、やっぱり糸をつくるのが好きだからですよね。いつの間にか私はすっかり“糸オタク”になっていました。
ショップチャンネルさんと意気投合して“金髪の糸作家”が誕生
当社の糸がようやく世界で認められるようになり、アメリカの展示会に出展したことがありました。ブースにはたくさんのお客様が来てくださったのですが、とりわけ興味津々で声をかけてきてくれたのがショップチャンネルのバイヤーさんで、お互いのものづくり・選定のこだわりが合致し、すっかり意気投合して出演が決まりました。初オンエアの前の打ち合わせで、私の立ち位置で一番しっくりくる“糸作家”を名乗ることにしたんです。それで「糸作家っぽくしてみよう」と思い、自宅で髪を明るく染めたのが“金髪の糸作家”が誕生した裏話です(笑)。
今、繊維業界では金髪の日本人といえば私というイメージが定着して、顔を覚えてもらえるようになりました。
寝るのがもったいないくらい充実した毎日
私の中で仕事とは“全力で打ち込めるもの”。
毎日が楽しく、寝るのがもったいないくらいです。今、故郷の山形・寒河江でショップを展開しているのですが、休みの日や仕事終わりには店頭で販売しているサボテンの手入れをする“サボテンの時間”があります(笑)。また、料理をするのも好きなので、イタリアへ出張した時は市場で食材を買い、スタッフに自ら手料理を振る舞ったりもします。
GEAの外観
新しい文化を新しい山形で生み出していく
寒河江で展開している「GEA(ギア)」というショップは、山形の魅力を発信するためにオープンしました。これまで地方は、東京のトレンドを追いかけることが一般的でした。便利になる一方で、その土地で育まれた文化や産業が衰退していくのを目にして、大事なのは地方が持っている文化を育て、日本や世界に発信することではないかと思ったのです。常に新しい文化を生み出し、「山形だからこそ」という価値を私目線で伝えていきたいです。